愚かさ・臆病さ故の集団幻想

以下は、毎日新聞2008年3月4日朝刊の発信箱からの引用=転載。

集団幻視の海 玉木研二(論説室)



 情報を冷静かつ迅速に掌握、整理できない。
今の防衛省に始まったことではない。
旧軍に苦い教訓がある。
最たるものは1944年10月の台湾沖航空戦だろう。
米軍大艦隊を航空部隊が襲い、
空母19隻など轟撃沈破57隻の大勝利を収めたと発表した。
実際は、一隻も沈んでいなかった。


 この「日本海海戦以来の大勝利」という大本営は初めから創作したのか。
そうではないところに、より深刻な問題がある。
夜だったり、雲でよく見えないのに敵味方区別なく火柱を命中と報告したり、
同じものを見た複数の報告を別個に扱って数えたり、
と正確さを著しく欠いた。


 さらに
はっきり分からない」とか「この報告はおかしい」などと、
勝ちムードに水を差すような発言ができない空気
指揮官や参謀を圧した。
未帰還機の勲功にすべく、あやふやな情報を戦果に加えた例もあったらしい。
前線→基地→司令部→大本営と情報が上がるほど誇大になった。


 新聞は連日見出しを踊らせた。
軍の発表通りに書かざるを得なかったという域は超えた、手放しの万歳紙面だ。
東京で「国民大会」が開かれ、興奮は絶頂に達した。


 戦局が絶望的な時期だった。
大本営は台湾沖戦の実態を掌握しながらウソをついたのではなく、
目をそらし、検証を忌避し、「勝った、勝った」の集団催眠に逃避したのである。
洋上に無事な敵の大艦隊が確認されても「敗走の残存部隊」と強弁した。


 今防衛省内を「おかしい」と言えぬ空気が圧していないか。
とことん突き詰めるスタッフが忌避されていないか。
思い過ごしなら幸いだ。
(引用=転載、終わり)




全く同感である。


(優秀な素養があるかもしれない)背広組・制服組(自衛隊員)を伸ばす純粋なロマンが、
現在の福田康夫首相→石破茂衛相防衛省自衛隊)の体制では、もはや存在し得ない。
そういうことすら福田康夫首相・石破茂衛相は分かっていない。


彼らには特に、
非人間的な天災人災に対応し続けて行くためにも、
何よりも人間としての真の自尊心(真の正義感・真の思いやり・真の勇気)が必要である
ということが最初の最初っから分かり切っているはずなのに、
昭和戦前の傍若無人な軍人たち同様、まるで分かっていらっしゃらない・・・。


このままでは、防衛省自衛隊は、日本国民から、未来永劫、信頼され得ないであろう。
首相・衛相・次官たちが揃いも揃ってパッパラパーで潔(いさぎよ)くないばっかりに・・・。


南無阿弥陀仏・アーメン。